ユーミンと中島みゆき
私の音楽シーンにはいつも二人の女性がいた。
ユーミンと中島みゆきである。
たぶん二人とも私と同世代だろうから若い人は知らないかもしれない。
だが、わたしたちの世代には圧倒的な人気があった。
しかし、ユーミンと中島みゆきは対照的である。
ユーミンには「中央フリーウェイ」という曲があるけれど、その名の通り高速道路を疾走しながら聞くにはちょうど良い。
ユーミンが活躍した時代はちょうどモータリゼーションが発展した時代と重なっている。
高度成長期にはユーミンの楽曲がよく似合う。
その点、中島みゆきの曲はごつごつしていて各所に引っ掛かりがある。
とても高速道路を突っ走るような疾走感はない。
ユーミンが軽快なら中島みゆきは重厚あるいはドラマチックである。
あえて言えば「プロジェクトX」のようなドキュメンタリーや深刻なドラマの主題歌にふさわしい。
それがどうしてユーミンと同じく人々の支持を得たのか?
たぶんユーミンのイメージの裏側を衝いたからだと思う。
世の中がユーミン一色に染まってしまってはいけない。
人間にはもう一つの側面がある。
そういう人々の無意識のバランス感覚が働いたからだと思う。
つまり、おたがいに補完しあって人間の全体像が成立するのだ。
ユーミンと中島みゆきは私たちの時代を通じてそんな役割を果たしてくれた。
中島みゆきのデビュー作に「時代」というのがあるけれど、これからの時代この二人のようなペアがあらわれるだろうか?
歌詞の面でも、軽快対重厚である。
ユーミンの「魔女の宅急便」の主題歌を聞いてほしい。
アップテンポの曲に乗って、歌詞が流れていく。
中島みゆきの「糸」を聞いてほしい。
岩に波濤が砕けるように、曲と歌詞がぶつかり合う。
二人の歌を重ね合わせると、つくづくことばの多様性とそれが生み出す力を感じないわけにはいかない。
これも「宇宙を循環することば」が循環の過程で磨き上げたわざだろうか?
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