一音節語をめぐって(その29)
次の「ら」行も特殊である。
そもそも和語では「ら」行の音が語頭に来ることがない。
したがって「ら」行の一音節語はない。
これで話を済ませると楽ちんなんだけれど、そうはいかない。
語頭に限らず「ら」行音を含む和語は他の行に比べて圧倒的に少ない。
「れ」に至っては辞書には和語も漢語もひとつもない。
「ら」行音は日本語の中では異端なのだ。
どうして異端なのだろう?
現代語では「ら」行音はよく出て来る。
「もっと論理的に話せよ」とか「練習に行かなくちゃ」とか「早く食べろ」とか言う。
最初の二つの例は漢語である。
漢語には「ら」行音を含むものが多いから、漢語・漢字を受け入れ使いこなすなかで「ら」行音が増えていった。
三つ目の例は和語だけれど、この「ろ」は動詞の活用語尾として働いているに過ぎない。
いずれにしても「ら」行音は他の行に比べて日本語の中では主流ではない。
異端の地位に甘んじている。
一音節語はないけれど、一応各音をレビューしてみよう。
まず「ら」である。
広辞苑では「拉」と「羅」が出ている。
「拉致」や「羅列」、「網羅」はよく目にする。
しかしすぐ思いつく「裸」は出ていない。
明解国語辞典には、「等」と「裸」と「羅」が出ている。
「羅」は共通しているが他は違う。
辞典はことばを調べる拠り所なのだから、こんなことでは困る。
各社の採用基準はどうなっているのだろう?
「等」は比較的よく使う。
特に法律文では逃げ道あるいはぼやかす意味で愛用される。
「国の機関等に対する処分等の適用除外」などと使う。
この「等」は「とう」と読む。
漢和辞典には訓は「など」と出ている。
では、「これ等」や「彼等」の「ら」はどうなのだろう?
新明解漢和辞典には訓として出ているが、一般的には訓とは認識されていないように思う。
その証拠に、「漢字林」という別の漢和辞典では訓として出ていない。
明解国語辞典によれば、この「ら」は接尾辞として機能している。
「彼等」のほかにも、「どちら?」、「いくら?」の「ら」も接尾辞である。
中国語ではこのような使い方はしない。
結局のところ、この「ら」は字音なのか訓なのか?
よくわからない。
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