一音節語をめぐって(その8)
「か」の次は「き」である。
広辞苑で「き」を引くと、見出しが50近くもある。
和語もあれば漢字の字音もある。
字音の中で最も気になるのは「気」である。
前回「漢字一字では日本語の語彙にならない」と言ったけれど、「気」は日本語のりっぱな一音節語となっている。
しかも日常会話の中で非常によく使う。
「気になる」、「気にする」、「気を使う」などのように。
さらに、「気圧」、「天気」、「空気」、「気候」、「元気」などのように「気」を含む2字の漢語もよく使う。
漢語だけでなく「気持」という和語もある。
広辞苑に意味の解説の後に、「気を許す」など「気」を含む表現や慣用句がなんと90近くも列挙されている。
広辞苑で「気」の解説を見ると、第1番目に「宇宙を構成する基本と考えられるもの」とある。
「気」はわたしたちにとって、とても大事な概念なのだ。
2番目は「生命の原動力となる勢い」である。
これも人間にとって欠かせない。
3番目は「心の動きを包括的に表す語」である。
これは1番目や2番目の意味をわたしたちの精神に当てはめた結果だろう。
4番目は「はっきりとは見えなくても、その場を包み、その場に漂うと感ぜられるもの」とある。
いわゆる「雰囲気」であり「空気」である。
「気」はわたしたちにとって、これだけ大事な意味を持ったことばなのだ。
それなのに訓がない。
当然、漢字伝来以前にも「気」に対応する概念はあったはずだ。
古日本語では「気」のことを何といっていたのだろう?
広辞苑に出ていた「気」の4つの意味は、言語を問わず世界中の人間に共通するものだと思うけれど、世界の諸言語には「気」にぴったり対応することばがない。
英語では「air」といったり「atomosphere」といったりするけれど、日本語で使う「気」とは少し違うような気がする
「気」の本場、中国語ではどうなのだろう?
気になるけれどわからないので先に進む。
あと、よく使われる和語では「木」だろうか?
日本列島は「木」の国だから、よく使われるのも納得がゆく。
「木」を含む慣用句や表現も多い。
そのあとは「黄」くらいかな?
でもこれはちょっと特殊で、「木」ほどの一般性はない。
そうそう忘れていた。
「生」を「き」とも読む訓があった。
「生糸」、「生むすめ」、「生一本」、「生真面目」などという。
ピュアという意味が込められている。
「なま」、「いきる」という訓のほうが一般的なのでつい忘れてしまうけれど、どうして「生」という漢字に「き」を宛てたのだろう?
気になる問題である。
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