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2017年10月 8日 (日)

名簿の作りかた

たとえば、カイロの小学校のクラスの生徒名簿はどのような順序で作られるのだろう?
そんな素朴な疑問がきっかけになって、言語音あるいは文字の順序、という問題にはまり込んでしまった。

どのような人間集団であれ、成員の名簿を作成するとなれば何らかの順序という概念を設定せざるを得ない。

必ずしも音または文字の順序でなくてもいい。

たとえば家族集団の場合なら、年齢順に並べるという手もあるだろう。
会社のように上下関係のある組織なら、社長からヒラまで地位順に並べることもある。
そのほか身長順に並べるという身体特性を基準にした方法もある。
学校の場合なら、成績順という露骨な方法もある。

ただ、これらの方法の場合、めざす人がどのあたりに並んでいるのか見当をつけるのがむずかしい。
特に集団が多人数になる場合はそうだ。

だから、実用上の利便を考えて、たいていその名を口にした時の言語音の順に並べてある。
日本語のかなのように、一つの音節がひとつの文字に対応するような言語圏では、それは文字の順でもある。

どのような言語集団であれ、便利な名簿を作成しようとするなら言語音の順に並べることが一般的だ、ということは分かった。

それでは、その言語音をどのような順序で並べるのか、というのが次の問題になる。

たとえば、カイロの小学校のクラス名簿を読み上げていくとする。
各人の名前の最初の音はどのような順序で並んでいるのだろう?

今や世界のどこの国にも小学校はある。
だから、どこにも生徒名簿はある。

それらの名簿を収集、比較、分析して順序の原理を明らかにしてくれた研究はあるのだろうか?
少なくとも私は見たことがない。

どの本も、五十音順にしろabc順にしろ順序があることを前提に話が始まっている。

人間社会に言語が成立した当初から言語音相互の間に順序が存在していたわけではあるまい。
社会生活上のさまざまな必要に迫られて、人為的に順序が持ち込まれたのだ。

日本語であれ、英語であれ、中国語であれその歴史的な成立過程が知りたい。

ここで文字との関係が問題になる。
現代の名簿はみな文字で作られている。

日本の名簿はあいうえお順で作られているし、イギリスの名簿はabc順に作られている。
日本の名簿は言語音、英語の名簿はアルファベットの順で作られている、という違いがあるだけだ。

言語の長い歴史から見れば、文字の出現などごく最近のことだ。
無文字時代の学校では、こどもたちはどのような順序で出欠をとられていたのだろう?

そもそも無文字社会では、順序の概念など不要だったのだろうか?
そうではないように思うのだが…。

日本も昔は無文字社会だった。
大陸から漢字が伝来しても、しばらくはかながなかった。
だから、名簿を作るにしても漢字の中に順序を持ち込まざるを得ない。

それはどのような順序だったのだろう?
いまの漢和辞典のように画数の少ない順に並んでいたのだろうか?

律令前期には式部省という役所があった。
だから、当然その職員名簿もあったに違いない。
それを記した木簡でも出土すれば上の疑問も氷解するのだが…。

たかが名簿ひとつのことでも、言語をめぐる素朴な疑問は尽きることがない。

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