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2016年11月 6日 (日)

緑と象徴

JRは安全性をアピールするために、グリーン車や「みどりの窓口」など緑という色彩語を戦略的に使っている。

グリーン車に乗りこんでも、別に車内が緑色に内装されているわけではない。
みどりの窓口といっても応対する社員の制服はブルーだ。

つまり「みどり」、「グリーン」という語は、色彩を表現するために用いられているわけではない。
実際の色彩とは何の関係もなく、象徴的に用いられているのだ。

そこに込められた象徴的意味は「安全」である。

以前お話ししたように、緑には「若々しい」という象徴的意味もある。
しかしJRの場合、「若々しい」という象徴的意味は込められていない。

グリーン車に乗りこんでも若者があふれているわけではない。
むしろ年配の乗客がほとんどだ。

やわらかな新緑の若葉を見れば、そこから「若々しい」という象徴的意味が発生してくるのは納得できる。
しかし緑という色彩語と「安全」という概念の結びつきは、直観的には分からない。

それから緑には「自然環境」という象徴的な意味もある。
ドイツには「緑の党」という政党がある。
日本でもかつて天皇誕生日と呼ばれた休日が今では「みどりの日」になっている。

「安全」とちがって、「自然環境」と緑の結びつきはより直接的だ。
初夏の森に分け入ってみると、心まで緑に染め上げられそうなほど緑にあふれている。
象徴的意味というより、直接的意味といった方がいいかもしれない。

「自然環境」、「若々しさ」、「安全」という象徴的意味を持つ「みどり」は、以前もお話ししたように日本語の世界では好感度が高い。
色彩名が休日の名称に取り入れられたのは「みどり」だけである。

また「宮崎緑」さんのように、女の子の名前にもよく使われている。
「宮崎あおい」さんのように他の色彩語も用いられているけれども、「みどり」ほどではない。

それほど好感度の高い緑だけれど、なぜか進出できない分野もある。

たとえば、車の色。
駐車場にずらりと並んでいる車の色をご覧いただきたい。
ほとんどが白、グレー、黒、メタリックシルバーなどである。

その中に時折、赤や青の車が混じっている程度。
緑色の車はごくまれである。
かろうじて見かけたとしてもモスグリーンや若草色。
まともな緑とはいえない。

好感度が高いにもかかわらず、なぜ緑が車のボディーカラーに採用されないのか?
れっきとした緑であるにもかかわらず、「みどり」の語を避けてあくまでも「あお信号」と強弁するのはなぜか?

このふたつの疑問には、共通する秘密が隠されているのかもしれない。

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コメント

旧天皇誕生日は今現在「昭和の日」です。「みどりの日」は「憲法記念日」と「こどもの日」の間の日です。

投稿: | 2016年11月 8日 (火) 14時55分

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