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2016年2月13日 (土)

上と下(その8)

現代日本語では、漢字の読みは呉音と漢音が二大潮流をなしている。
「行脚」や「普請」のような唐音もなくはないが、ごく少数派である。

これを上と下に当てはめると…。

「上」の場合、「じょう」が呉音、「しょう」が漢音。
「下」の場合、「げ」が呉音、「か」が漢音。

「上」の場合、音としてほとんど変わりはないが、「下」は違いが大きい。
だから日本語における「げ」と「か」の使い分けについて、前回と前々回立て続けに頭を悩ませたのだ。

この地上において、「上」には天国があり「下」には地獄がある。
だから、「上」に向かえばいいこと楽しいことが待っており、反対に「下」へ行くとろくなことがない。

これが言語圏にかかわりなく、人類共通の空間感覚だと思う。

ここで前回対比した「落下」と「下落」を思い出していただきたい。

「落下」にしろ「下落」にしろ好ましくない事態であることに変わりはないけれど、語感としては「下落」のほうがよりマイナスイメージが強いと感じませんか?

「落下」のほうは自然法則にしたがった物理学的現象を淡々と記述しているところがある。
これに対して「下落」という語には、好ましくないという価値判断があからさまに露出している。

この違いを字音と関連させてみると…。

音感としては、濁音である「げ」は清音である「か」よりも嫌われるのではないか。
だから、マイナスイメージの強い「下落」には「げ」が用いられ、それほどでもない「落下」には「か」が採用された…。

というのが私の根拠なき素人考えだ。

まさかとは思うけれど、「下品」や「卑下」というマイナスイメージの強い語にはたしかに「げ」という音が用いられている。

これまでもお話ししてきたように、「下」という文字はろくでもない意味を有している。
それなのに、貴人に対する尊称としても「下」が用いられる。

陛下、殿下、閣下、猊下などのように…。

それに「下賜」などのような貴人の行為にも「下」が含まれている。

こうしたケースでは、ぜんぶ「か」という読みが採用されているのだ。

このような状況証拠を考えると、「か」と「げ」の使い分けに音感的要因が働いているという私の仮説も案外的はずれではないのかもしれない。

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