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2016年1月 9日 (土)

上と下(その3)

わたしたちの暮らしている地球には上下方向につねに重力が働いている。
だから、ちょっとでも油断をしていると「おちる」危険がある。

ぼんやり街を歩いていると、ふたのあいたマンホールに「おちる」かもしれない。

「おちる」は、漢字を用いて「落ちる」、「墜ちる」、「堕ちる」などと書いたりする。
前回もお話ししたように上下方向は価値秩序がはっきりしているので、下方向に移動するとろくなことはない。

だから、「落ちる」も「墜ちる」も「堕ちる」も自分の意に反した動きをあらわす。

これに対して、「おりる」というよく似た動詞がある。
こちらは自発的な意志にもとづいた動きである。

だから、「山をおりる」といったり「社長の座をおりる」といったりする。
この場合、ふつうは漢字を用いて「降りる」と表記する。

ところで、「くだる」というよく似た動詞もある。
「社長の座をくだる」とは言わないが、「山をくだる」という言い方はふつうに使う。
この場合は「下る」と表記することが多い。

「おりる」も「くだる」も下方向への動きをあらわす自動詞だけれど、さてどう違うのだろう?

広辞苑で「おりる」をひもとくと次のように出ている。
上から下への移動を示すが、到達点に焦点を置く点で「さがる」と異なり、目的・意図のある作用を示す点で「おちる」と異なる。

「さがる」や「おちる」との違いは示されているけれども、「くだる」との差異にはふれていない。
「くだる」については、「高いところから低いところへの移動」とそっけなく解説されているにすぎない
この点では、新明解も同じである。

困った。どこにも助けを求められないのだろうか。
このような場合、多数の用例を収集して両方使える場合、どちらか一方しか使えない場合を整理分析して違いを明らかにするのが本筋というものである。

しかし、いかんせんそれだけの時間的余裕が私にはない。
したがって、無鉄砲ではあるがこの際「えいやっ」と印象だけで判断してみたい。

「山をおりる」も「山をくだる」も意味は同じである。
しかし用法として、「おりる」のほうが一般的であり「くだる」のほうは限定的。
時代感覚として、「おりる」のほうが現代的であり「くだる」はやや古風。

というのが私の印象だけれど、みなさんはどうだろうか?

余裕がないとはいえ、印象というあやふやな基準で判断してしまった。
反省することしきりである。

 

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