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2016年1月30日 (土)

上と下(その6)

「うえ」と「した」という対概念をまとめて表現するときは「上下」という漢語を用いる。
「じょうげ」と発音する。

「上」の日本語における字音は「じょう」と「しょう」である。
「じょう」が呉音、「しょう」が漢音とのことだ。

親鸞上人というくらいだから「しょう」のほうが呉音と思っていたのだが、違うらしい。

ともあれ、「じょう」にせよ「しょう」にせよ、ほとんど発音上の違いはない。

これに対して、「下」は「か」と「げ」。
「げ」が呉音、「か」が漢音とのことだが、「上」に比べると呉音と漢音はずいぶん異なる。

山をおりること、くだることを漢語では「下山」という。
川の流れの海に近い部分を「下流」と言う。

「下山」は「げざん」と読み、「下流」は「かりゅう」と読む。

二院制をとっている国では、二つの議会をまとめて上下両院という。
この場合では、「じょうげ」ではなく「じょうか」なのだ。

「げ」と「か」、その使い分けの基準は何なのだろう?

よく仏教がらみのことばは呉音で、それ以外は漢音で読む、といわれる。
関西大学は「かんさいだいがく」だけれども、「関西学院大学」は「くゎんせいがくいんだいがく」と読む。
関西学院大学はキリスト教系だから、呉音である「西=さい」を避けたのだ、ということは関西の人ならみな知っている。

けれども、「下山」や「下流」は別に宗教とは関係がない。

歴史的にはまず呉音が入り続いて漢音が入ってきたということだが、してみると古い漢語は呉音で、新しい漢語は漢音で読む、というルールがあるのだろうか?
たしかに「宣下=せんげ」なんて語は古めかしいけれど…。

字音読みの世界では、現在は漢音優勢なのだそうだ。
たしかに印象としては、「げ」よりも「か」と読む語のほうが多いような気がする。

しかし…。

どうして「下山」は「げざん」と読むようになり「下流」は「かりゅう」と読むようになったか?
なぜ「下院」は「げいん」でなく「かいん」と読むようになったか?

という疑問に対する説明としては弱いような気がする。

他方の文字の字音との関係その他ルールらしきものはいろいろ考えられるにせよ、結局は「慣用」ということばで片づけるしかないのだろうか。
しかし、「慣用」を持ち出してくるとそこで思考停止に陥ってしまう。

「慣用」なら「慣用」で、それが人々に「慣用」として受け入れられ定着していくだけの理由があったはずである。
それを探求することが、「慣用」のその先に進むための手がかりになる。

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