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2015年12月 5日 (土)

指南と敗北

日本語には「指南」や「敗北」という熟語がある。

この場合の「南」や「北」は方位を意味していない。
では、どうしてこのような熟語が成立したのだろう?

という素朴な疑問がきざしたので、辞書をひもといてみた。

すると、「指南」とは古代中国において指南車が南の方角を示して兵を導くことから、教え示すこと、教え導くことという意味が成立した、とある。

なるほど。
現代語の「指南」には方位の意味はないけれど、南の方位とつながっていることがわかった。
勉強はしてみるものである。

では、「敗北」はどうか?

私は今まで知らなかったけれど、「北」にはもともと「そむく」、「にげる」という字義があるのだそうだ。
このことは平戸皆空さんのコメントに教えていただいた。

それなら「敗戦」と「逃走」が結びついて「敗北」という熟語が生まれるのはよくわかる。
「指南」と違って、このケースでは北という方位とはまったく関係がない。

漢和辞典によると、「南」は形声文字。
草木が盛んに伸びるさまをあらわしているという。
私たちが考える「南」のイメージにふさわしい。

一方、「北」は会意文字。
二人の人間が背を向けあっているさまをあらわしているという。
つまり、「そむく」がこの文字のもともとの意味なのだろう。

それがどのような経緯で方位の北を意味するようになったのか?
残念ながら、辞書にはそこまで書かれていない。

ここまできたら、ついでに「西」と「東」も片づけよう。

「西」は象形文字。
巣の上に鳥が休んでいるさまだという。
鳥がねぐらに帰るのは日が西に沈むころなので、西の方位をあらわすようになった。

「東」は会意文字。
「木」と「日」の組み合わせで、朝日が木立の中ほどにさしのぼる方角をあらわすという。

こうしてみると、どうも「北」だけが字形と方位が結びついていない。
なぜだろう?

どのような経緯で「北」という文字が「北」を意味するようになったのか?
今後の研究課題としよう。

さて、「ひがし」、「にし」、「きた」、「みなみ」という和語は、漢字伝来以前から日本列島で行われていたはずだ。
では、これらの2音節ないし3音節の音連続と基本方位とはどのようなプロセスを経て結びついたのか?

漢字のように図像から推理することはできない。
推理の手がかりがない。

結局、ソシュールのようにその結びつきは恣意的、とそっけなく片づけるしかないのだろうか?
なんだかくやしい。

漢字のような表語文字を持たない言語はみな同じくやしさを抱えていると思う。

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