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2015年9月19日 (土)

たてよこ幻想(その2)

「たて」、「よこ」ということばを広辞苑で調べていて、気になる説明にぶつかった。

それによると、「たて」は南北の方向、「よこ」は東西の方向あらわすというのだ。
ちなみに新明解にはそうした説明はない。

たしかにタテ糸を意味する「経」の文字には南北方向という意味がある。
ヨコ糸をあらわす「緯」という文字には東西方向という意味がある。

わたしたちは地球を想像的にタテ糸とヨコ糸で輪切りにして、その交点で地球上の位置を確定している。
大阪は北緯35度、東経135度などと言っている。

タテ糸とヨコ糸を編み合わせて生地を織っていくのだけれど、どういう経緯で「経」には南北、「緯」には東西という意味が与えられたのかはわからない。
これもまた「説文解字」か白川先生に教えていただくべきだろうか。

ともあれ、日常会話で「たて」、「よこ」を用いて方位をあらわすことはないから私はいささか当惑した。

では、わたしたちはこのありふれた「たて」、「よこ」という語をどのように使っているのだろうか?

机の上に1枚の紙を置き、鉛筆で左右にまっすぐ直線を引く。
これが横の線である。

そしてこの横線に直角に交わるようにもう一本の直線を引く。
これが縦の線になる。

横線は左から右、もしくは右から左に引くのだけれど、縦線を引く動作はどう表現すればいいだろう?

上から下へ?
奥から手前へ?
それとも、前から後ろへ?

この場合の手の動きを正確に表現するなら、「奥から手前」ということになるだろう。
しかし、ふつうは「上から下に線を引く」というのではないだろうか?

上下という語は本来3次元空間において意味を持つ語である。

わたしたちは「奥から手前」という2次元的動きを「上から下」という3次元的動きにすりかえて表現しているのだ。

たしかにこの用紙をデスクトップに対して垂直に持ち上げれば、上から下に線を引いたことになるので何とか許せるかもしれない。
しかし認識のすりかえが行われた事実はおおうべくもない。

この縦線、横線にしかるべき目盛りをつければ、おなじみのグラフが出来上がる。
横線に月日を縦線に株価をプロットすれば、株価の変動がよくわかる。

「このところ、ずいぶん株価が下がってますねえ」

そんなふうに、グラフ上の2次元的変化を見てわたしたちは3次元的用語を用いてため息をつく。

わたしたち人間の認識能力や言語表現には限界がある。
そのために、さまざまなすりかえ操作を行うことでこの限界を克服しようとしているのだ。

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