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2015年4月 6日 (月)

「じょう」と「ば」

前々回、古めかしい「湯桶読み」や「重箱読み」はやめて「目線読み」や「番組読み」のように現代風に改めてはどうか、と提案してみた。

この提案は軽薄だとして世の人々から一蹴されるかもしれない。
それならそれでもかまわない。
年のせいか、あまりこだわらなくなった。

ところで、「目線」や「番組」は純然たる漢語に対して、混種語と呼ばれる。
しかし、漢字表記だけではそのどちらとも判定できない語がある。

たとえば「工場」。

あなたはこの熟語を「こうじょう」と読むだろうか、それとも「こうば」と読むだろうか?
あるいは時と場合に応じて両者を使い分ける?
「こうじょう」なら漢語だし、「こうば」なら重箱読みすなわち混種語になる。

「こうじょう」と「こうば」がまったく同じ意味と思っている人は少ないと思う。
ニュアンスの差を感じている人が多いと思う。

「工場=こうば」について辞書には、「工場(こうじょう)の一時代前の表現。やや小規模のものを指すことが多い」とある。

ということは時代をさかのぼれば「こうじょう」よりも「こうば」のほうが一般的な名称だったのだろうか?
「工場」はおそらく明治時代に成立した語だと思うけれど、富岡製糸場のような大規模な施設も「こうば」と呼んだのだろうか?

「やや小規模のものを指す」という解説は多くの人が首肯するところだ。
寅さんの映画でタコ社長が経営する印刷工場はやはり「こうば」でなくちゃ。

「工場」においては「ば」は「じょう」に対してへりくだっている。
訓は字音に対して頭が上がらない。

訓読みは漢字に和語を当たものだ。
「和」は「倭」に通じている。
「倭」は「矮」に似て「小さい」という意味を連想させる。
「こうじょう」に対して「こうば」は小さいのだ。

和語と漢語が共存し交錯する日本語の世界だけれど、やはり漢語のほうが正統的でえらい、和語は身近だけれどその分卑近であるという意識が日本語話者のどこかにある。

しかし、いじけていてはいけない。
「目線」を見よ!
「目=め」の訓読みを誇り高く貫いているではないか。

つけたし。
漢語でもあり混種語でもあるという例はさしあたり「工場」しか思いつかないけれど他にもあるだろうか?
ご教示を賜りたい。

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