«  「しま」と「とう」 | トップページ | 名の呪力 »

2014年7月11日 (金)

風景の化身

これまでわたしたちは川の流れに乗って、日本列島のさまざまな風景を愉しんできた。

その風景や地形はそれぞれの語で呼ばれ、また文字で示された。
たとえば…。

山、谷、沢、川、河、瀬、淵、野、原、田、畑、森、林、岩、石、村、町、岡、池、沼、浜、海、磯、崎、浦、島などなど。

そこで気づくことは、日本人の姓にこれらの要素がいかによく取り入れられているか、ということだ。

わたしたちの先祖は田んぼの真ん中に立ってぐるりを見渡してから、おもむろに自分たちの姓を決めたのではないだろうか?

たとえば上記の文字の下に「田」をくっつけてみる。

山田さん、沢田さん、川田さん、野田さん、原田さん、村田さん、森田さん、岡田さん、池田さん、沼田さん、浜田さん、磯田さん、島田さん…。
たちどころに日本人のありふれた姓が出来上がる。

「田」のかわりに「野」でもいい。
山野さん、河野さん、野村さん、磯野さん…。

素朴な大きさ表現である「大中小」をくっつけてもいい。
大野さん、中野さん、小野さん…。
大山さん、中山さん、小山さん…。
大川さん、中川さん、小川さん…。

素朴な方位表現である「東西南北」をくっつけてもいい。
西山さん、北川さん、南野さん、東田さん…。

素朴な垂直感覚である「上中下」をくっつけてもいい。
上田さん、中谷さん、下村さん…。

もちろん、そのものずばりの一字姓も少なくない。
谷さん、原さん、岡さん、森さん、林さん、島さん…。

日本列島の風物と素朴な感性の出会い。
それがわたしたちの姓になった。

統計を調べたわけではないが、このようなメカニズムで誕生した姓を持つ人は日本の人口比で半数を超えるような気がする。

姓のつくりに関するかぎり、わたしたちは日本列島の自然の中から簇生した風景の化身と言ってもいい。
少し前には、日本人の姓は列島の風土を映す鏡みたいなものだ、という言い方をした。

このような現象は日本固有のものだろうか?
それとも他の言語圏でも同じような現象が認められるのだろうか?

たとえばロシア人の姓はどのようなつくりになっているのだろう?
中国では、フランスでは、スリランカではどうだろうか?

それぞれの言語圏について比較してみるのもおもしろいと思う。

|

«  「しま」と「とう」 | トップページ | 名の呪力 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



«  「しま」と「とう」 | トップページ | 名の呪力 »