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2014年2月16日 (日)

山と岳(その2)

信州・霧ヶ峰は私のお気に入りの場所のひとつである。

どこまでも広がるなだらかな草原の起伏。
その草原の瞳のように小さな池塘や湿原がいくつも点在している。

雲が流れ、草原にその影がうつろい、いつしか深い霧が音もなくあたり一面を包んでいる…。
夢のような気分で逍遥できるところである。

霧ヶ峰のいちばん高い場所は「車山=くるまやま」である。
標高は2千メートルに少し足りないが、てっぺんからは360度の眺望を楽しめる。

西に目を向ければ、北アルプスの山々が連なっている。
北アルプスには高く険しい山が多いので、山名も「なになにだけ」というのが多い。
しかるに、「北アルプスのたけだけ」という言い方はしない。
上のように「北アルプスのやまやま」とごく自然に言う。

「やま」ひとつで足りるところ、なぜ「たけ」ということばが必要だったのか?
そして、「たけ」はなぜ固有名詞にしか用いられないのか?

というのが前回問うたまま、答えを出せなかった疑問だ。

「やま」、「たけ」という和語は漢字伝来以前からあった。
漢字とともにやってきたインストラクターのアドバイスを受けて、「やま」には「山」を「たけ」には「岳」を当てることになった。

といういきさつは前回お話しした通りだ。
だから、「たけ」は「やま」より高く険しい、という日本語話者の感覚は漢字伝来以前からあった。
という推測は誤りではあるまい。

しかし実際の名付けをみると、さほどの区別があるとは思えない。
高さも山容も似たり寄ったりの山を、「○○山」と呼んだり「○○岳」と呼んだりすることは前回例をお示しした通りだ。

深田久弥さんの「日本百名山」にリストアップされている山の名前を分類してみると、「○○山」が53座、「○○岳」が43座。
ほぼ拮抗していると言っていい。

中には南アルプスの鳳凰山のように三千メートル級のけわしい山にも「山」という名付けがされている。
かと思えば、鹿児島の開聞岳のように千メートルにも足りない富士山型の山に「岳」という名がつけられている。

人の名でもそうであるように、山の名の成立も理屈では割り切れない。
そのご意見はごもっともだけれども、「山」と「岳」の区別に関してはどうしてももやもやが残る。

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