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2013年9月20日 (金)

「おとうさん」と「ファザー」

広辞苑で「おとうさん」の項を引くと、「明治末期の国定教科書に使われて以後広まった語」とある。

なるほど。
してみるとそれ以前はどのような言い方だったのだろう?

テレビの時代劇などでは息子が父親に向かって「父上!」とかしこまって呼びかけているけれども、あれがスタンダードだったのだろうか?

神田の桶職人のせがれも「父上!」と言ったのだろうか?
播磨国黍田村の百姓の娘も「父上!」と呼んだのだろうか?

ちがうような気もするけれど、実際はどうなのだろう?

それから「おとうさん」が標準の言い方として採用されるにあたってはそれなりの前史があったはずだけれど、「おとうさん」の起源も知りたいところだ。

ところで日本語の世界では、「おとうさん」、「おにいさん」、「おじいさん」、「おじさん」などの呼びかけ用の親族呼称は親族以外にも転用される。

たとえば、しょぼくれた中年男が繁華街を歩いていると「ちょいとそこのおとうさん、寄っていきなよ!」と声をかけられたりする。

その男性がもう少し若ければ、「ちょいとそこのおにいさん!」になる。

「おじいさん」、「おじさん」も同様に中高年男性一般への呼びかけに用いられる。
また、このことは女性の親族呼称についても同じである。

ただし「むすこ」や「おとうと」や「おい」などの年少者用の親族呼称は呼びかけには使えないので、この転用の現象は生じない。

外国語でもこうした現象は見られるのだろうか?

英和辞典には、高齢男性に向かって「おじいさん!」と呼びかけるときに「ファザー」を用いることがある、と出ているがどの程度一般的なのだろう?

また、アメリカではカジュアルな表現として「ちょっと、そこのおねえさん!」と呼びかけるときに「シスター」を使うことがある、とも解説されている。
これもどの程度一般的な言いかただろう?

これまで親族呼称の親族以外への転用は日本語特有の現象と思っていたけれど、上のように必ずしもそうではなさそうだ。

また、日本語では家族内の最年少者を基準にして親族呼称を人称代名詞として用いることがある。

「おとうさんはな、おまえの将来を思って…」
「それ、おねえちゃんの靴でしょ、しかられるわよ」

英語では自分のことを「ファザー」言ったり自分の娘のことを「シスター」と言うことはないと思う。
しかし日本語だけに見られる現象なのかどうか。

たとえば中国語やフランス語、クメール語など他の諸言語ではどうなのだろう?
かくして知りたがり屋の欲求は際限なく広がってゆく。

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