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2012年11月17日 (土)

「聞く」と「読む」(その5)

日本語では動詞の連用形が名詞として扱われる例が少なくない。

これまで話題に取り上げてきた言語活動にかかわる動詞についても、そのことに言及してきた。

おもしろいのは、その中でも名詞化されやすい語とされにくい語があることだ。

たとえば、「話す」、「語る」、「しゃべる」といった発話行為をあらわす動詞は簡単に名詞化され、日常会話でも頻繁に用いられる。

「話し」、「語り」、「しゃべり」…。

さらに、これらの動詞でも語頭に「お」がつくものとつかないものに分類することができる。
「お話し」は言えても「お語り」は不可である。
しからば、そのちがいは何に由来するのか?

などなど興味はとめどなく広がっていくのだけれど、「話し」が長くなるのでこの点についてはまた機会を見て「お話し」することにしたい。

一方、同じ言語の発信行為でも、文字言語の生成をあらわす「書く」という動詞は、名詞化されにくい。

「箇条書き」とか「お品書き」という形で名詞化する場合はあるけれども、「話し」や「語り」とちがって「書き」単独では名詞として使えない。

では、言語の受信行為をあらわす「聞く」と「読む」はどうか?

「読み」は名詞として扱うことができる。「きみきみ、まだ読みが浅いね」。

一方、「聞き」は「人聞きが悪い」とか「御用聞き」など、複合語になる場合は名詞として扱うことができる。
しかし、「聞き」単独では名詞にならない。
この点、「書き」と同じである。

「話す」と「聞く」。
「書く」と「読む」。

双方向の言語コミュニケーションの場では、対称的な地点に位置する動詞である。
ピッチャーとキャッチャーの位置関係を思い浮かべるとわかりやすい。

しかし動詞の名詞化という語のふるまい方の面から観察すれば、対称形にはなっていない、バランスが崩れている。

この点では、

「話す」と「読む」
「書く」と「聞く」

がそれぞれ同じグループに入る。

何という錯綜した関係だろう!
このことは、わたしたちの言語活動全体の中で何かを暗示しているのかも知れない。

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