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2012年11月 9日 (金)

「聞く」と「読む」(その4)

前回は、「歌を詠む」という言い方を取り上げて、「よむ」という動詞は言語の受信だけでなく、言語の生成発信という正反対の意味も併せ持つ、という不思議な現象についてお話しした。

そして、その理由について「よむ」という語の原義にさかのぼって、つたない私見を述べてみた。

その時はうっかり気がつかなかったけれど、実は「きく」という動詞だって同じように正反対の意味を持つことができる。

ほら、「生意気な口をきくな!」なんて言い方がありますよね。
この場合は、「きく」という動詞を用いながら発話行為を意味している。

だから、あえて漢字表記をする場合は「聞く」じゃなく「利く」を用いる。

少し前「きく」という動詞をめぐって考えたときに、その原義はある道具や器官の本来の機能が十二分に発揮されていることをあらわす、というお話をした。

ことばを発する、というのも口の持つ本来機能のひとつだから、たしかに「口をきく」が発話行為をあらわしても不思議ではない理屈になる。

こうして同じ語が時に正反対の意味を持つという一見不可解な現象も、その意味の源泉をたどることで納得することができる。

とはいえ、同じひとつの語が正反対の意味を持つようでは、わたしたちは立つ瀬がない。

それでもわたしたちの困惑をよそに、意味は語の源泉からこんこんと湧き出している。
基本語彙、用いられる頻度が高い語彙ほど、意味は豊富に湧き出してくる。

湧き出してあふれ、遂には正反対の地点まで滲みだしてゆく。

言語はわたしたちの住む世界を明晰に分節し秩序だてるもの、という言語観に立つならば、こうした意味の浸潤は厄介千万な現象といわねばならない。

西欧諸語、たとえばフランス語などはとりわけことばの明晰さを尊ぶそうだ。
かの言語では、「よむ」や「きく」のような正反対の意味を併せ持つ語はないのだろうか?

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コメント

連続コメント、失礼します。

英語の "shade" は、「陰、日除け」の他に、「色合い」 という意味もあります。

"Beautiful shade" といえば、普通には 「綺麗な色」という意味です。

投稿: tak | 2012年11月13日 (火) 17時44分

名刺ですが、「影」はいかがでしょうか?
「光そのもの」を指す場合(「星影」など)と、光が遮られて暗くなった部分を指す場合があります。
これほど極端な正反対はないと思うのですが、日本人のメンタリティでは、矛盾しないようなのです。

投稿: tak | 2012年11月13日 (火) 16時30分

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