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2012年8月10日 (金)

「話す」と「書く」(その2)

はなす、いう、しゃべる、かたる、のべる、つげる…。
発話行為を意味する日本語の動詞は多い。

これに対して、書記行為をあらわす動詞は貧弱である。
どんぴしゃりの動詞といえば「書く」だけれど、これとて元をただせば「掻く」からの転用だ。

ということを前回お話しした。

同じような事情は英語にもある。
書記行為をどんぴしゃりで表現する動詞は「write」しか思い浮かばない。

英語でも文字言語のことは「written Language」というけれど、では「write」の原義は何?

文字の誕生を受けて、書くこと専用に生まれた動詞なのか?
それとも日本語の「かく」と同じく、文字誕生以前すでにあった語の転用なのか?
英語にくわしい方のご意見を聞いてみたい。

ともあれ、発話行為をあらわす動詞の多様性に比べて書記行為をあらわす動詞の貧弱さ、という現象は日本語、英語に限らず多くの言語について当てはまると思う。
伝統的な文字大国である中国語の場合はどうだろう?

ところで、発話行為を意味する動詞の多くはたやすく名詞化する。
「はなす」が「はなし」になり、「かたる」が「かたり」になり、「しゃべる」が「しゃべり」になる。

それにひきかえ、書記行為をあらわす動詞の代表格である「かく」の連用形「かき」は名詞にならない。
どうしても名詞にしたければ、「こと」を補って「かくこと」とするしかない。

このことは、わたしたちの言語活動の中で音声言語が中心的役割を演じていることをあらわしている。

でも同じく書記行為をあらわす「つづる」は「つづり」に、「しるす」は「しるし」になるじゃない!

そんな反論も聞こえてくるけれど、このことは「つづる」や「しるす」が書記行為を意味するために誕生した動詞ではないことをはしなくも証明しているにすぎない。

「つづる」や「しるす」は文字誕生以前から、文字とはかかわりなく存在した。
文字成立以後、文字言語を生成することもその意味範囲にお情けで加えてもらっただけなのだ。

というような動詞の考察を通じて、わたしたちは言語活動に対する人々の主たる関心が音声言語に向かい、文字言語に対しては副次的な関心しか示していないことを明らかにすることができる。

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