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2012年8月 5日 (日)

「話す」と「書く」

はなす、いう、しゃべる、かたる、のべる、つげる…。

発話行為を意味する日本語の動詞は多い。

しかし、この現象は日本語にかぎらない。

英語にも、SAY,TELL,TALK,SPEAKなどたくさんの言いかたがある。
中国語でも、話、語、喋、述、告など発話行為をあらわす漢字は多い。
よくは知らないが、クメール語でもフランス語でもコプト語などその他の言語でも事情は同じではないか?

このことは、人がことばを口にするという行為に対して人間が古くから並々ならぬ関心を注いできたことのあらわれだ。

では、文字言語を生成するという行為についてはどうか?

日本語なら、とりあえず「書く」。
あと、「記す」、「つづる」、「あらわす」くらいかな?

ただ、「記す」は「足跡を記す」なんて言いかたもあって、もともとの意味は「記録する」ということだ。
文字言語を用いるのは、記録手段の一つに過ぎない。

「つづる」や「あらわす」にも同じことが言える。
本来の意味は「書く」とはずれているのだ。

結局、文字言語を生成する行為をどんぴしゃりであらわす動詞は「書く」しかない。
発話行為をあらわす動詞の豊かさに比べれば対照的だ。

その「書く」にしてももとをたどれば「掻く」なのだ。
指で背中のかゆいところを掻く、というあれである。

その動作が転用された。
やわらかい土を枯枝で引っ「掻いて」文字を「書く」。

つまり、文字言語を生成する行為をあらわすオリジナルな動詞などない、という意外な結論になる。

しかし、人類が長い長い無文字時代を過ごしてきた歴史を考えると、この結論にも納得がいく。

音声言語に比べればほんの新参者、という文字言語の素性がはからずも明らかになった一幕である。

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