« 乗り物と名前(その3) | トップページ | 命名のスタイル »

2011年9月11日 (日)

台風と名前

人は愛するものに対しては名付けをしなくてはいられない…。

何回か前にやや得意げにそんなテーゼを掲げたのだけれど、事実を検証していくうちにこのテーゼはあっけなく破綻してしまった。

それだけじゃない。
人は時として歓迎されざるものに対しても名付けをすることがある。

たとえば、台風。

アメリカではハリケーンに人の名を冠するそうだ。

つい先ごろ、東海岸を襲ったハリケーンは「アイリーン」という名前だった。
先年、ニューオーリンズに大きな被害をもたらしたハリケーンも「カトリーナ」と名付けられていた。

そういえば、日本でも戦後アメリカの占領期には同じことが行われた。
ジェーン台風、キャサリン台風、ルース台風などの名が、今も私の記憶に残っている。

名付けにはなぜか可憐な女性の名が多い。
アイリーンちゃんやカトリーナ夫人などアメリカ女性から、抗議の声は上がらないのだろうか?

名詞に性の区別がある言語では、「海」はふつう女性名詞とされている。
だから、海の乗り物である船も女性名詞である。
おそらく、そのような認識のあり方から海で誕生する台風にも女性の名が好んでつけられるのかもしれない。

日本語では名詞に性の区別はないが、海に女性のイメージを感知するのはこれらの言語圏と同じだ。
「母なる海」なんて言いかたもある

日本語の「うみ」は「うむ」からきている。

このことは、海は生命の母体という科学的事実とぴったり一致している。
とても偶然とは思えない。
日本語は生命の起源の秘密を知っているのかもしれない。

ともあれ、海を母として生まれた台風は迷惑千万なおてんば娘である。

アメリカ占領期は別として、日本では台風に固有名をつける習慣はない。
人の暮らしに被害を与える台風に一人前の名をつけてやるなど、とんでもないことである。

台風など通し番号で処理すれば十分だ。

それでも歴史的な大災害をもたらした台風には、そのことを後世に伝えなければならないから固有の名がつけられることがある。
室戸台風、伊勢湾台風、枕崎台風などの名は今も語り継がれている。

ただ、命名にしても人の名、女性の名が用いられることはない。
多くはその台風が襲った地域の名前が使われる。

最近は、固有名を贈られる台風は減ってきたように思う。
台風に名前は似合わない。

|

« 乗り物と名前(その3) | トップページ | 命名のスタイル »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 乗り物と名前(その3) | トップページ | 命名のスタイル »