« 土地の名 人の名(その12) | トップページ | 「名」の形式 »

2011年2月27日 (日)

「名」の性質

「ひみこ」という名は、音感的にもシャーマンを連想させる。

前回の最後にお話ししたように、「ひ」は「日」そして「火」に通じる。

燃えさかる火に向かって謎めいた呪文を唱えつつ、トランス状態で神託を口にする。
そんな女性のイメージが浮かぶ。

古代には女性シャーマンが多かったはずだから、そうした職能の人々を指して一般に「ひみこ」と言ったのかもしれない。
つまり、普通名詞だったのかもしれない。

あるいは個人名に先立って部族名が成立したことを考えると、「ひみこ」族という集団があったのかもしれない。

職能を指す普通名詞あるいは部族名を指すのだとすれば、今の日本人の名前でいえば姓に近い。

それが『魏志倭人伝』に記録されたことで特定の女性と結びつき、後世固有名詞化した。
そんな気がする。

むかしは西洋でも東洋でも女性には名前はなかったのだから、「卑弥呼」だって当時の日本では無名の人だったはずである。
少なくとも、彼女が子ども時代「ひみこちゃん、あそぼ」と呼びかけられる、そんな意味での名前ではなかったと思う。

じゃあ実際、彼女は友だちからどう呼ばれていたのか?

代名詞から始まって普通名詞、そして固有名詞へという名詞の進化論に従うなら、「ひみこ」ではなく単に「このこ」と指差されたのかもしれない。

あるいは、「あ」とか「な」とか、そんな1音節の人称代名詞が用いられたのだろうか?

仲間内ではニックネーム的なものがあった、と想像するのは楽しい。

仲のいい友だちの間では、彼女は「ハギノヒメ」、愛称「おはぎちゃん」と呼ばれていた。
そして、彼女のボーフレンドは「トチノヒコ」、愛称「とっちゃん」…。

いつの間にか佐藤さとるさんの世界に迷い込んでしまった。

彼女は若くして「鬼道を能くする」という評判だったから、その特徴をとらえて「ひみこ」というニックネームがついたと考えるなら、これは個人名に近い。

はたして「卑弥呼」は普通名詞か固有名詞か?

「姓」か「名」か?
職能や部族の名か、それとも彼女個人への名付けなのか?

「名」の性質を考えることから、彼女の実像に迫ることができるかもしれない。

|

« 土地の名 人の名(その12) | トップページ | 「名」の形式 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 土地の名 人の名(その12) | トップページ | 「名」の形式 »