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2011年2月20日 (日)

土地の名 人の名(その12)

前回は地名に即して名詞の進化論を考えてみた。

代名詞からはじまり、普通名詞を経て固有名詞へ。

ただ、こんな思いつきの単純な進化論が人の名前にも当てはまるかどうか?

なにごとも「おれ」や「おまえ」、「あいつ」といった人称代名詞ですます長い時代があったのかどうか?

無数の「あいつ」に対して、個体識別可能な名を与えなければならない。
名を与えることで、「個」を際立たせなくてはならない。

それよりも先に、「わたしだけの名」を持たねばならない…。

そんな意識がいつ、どのようにして成立したのか?
土地とちがってややこしい事情をたくさん抱える人間のことだけに、その解明はむずかしい。

こころみに「卑弥呼」について考えてみたい。

記紀が伝える神代の名前を別にすれば、「卑弥呼」は今に伝わる日本最古の人名である。
少し前に女性にまともな名前がついたのはつい最近のこと、とお話ししたばかりだけれど、何しろ女王さまだから別格なのだ。

『魏志倭人伝』の著者は直接卑弥呼に会ったわけではないので、彼女の名は人づてに聞いたはずである。
その時、かれが聞いた音声はどんなだっただろう?

いまわたしたちが発音している「ひみこ」と同じという保証はない。
「ピミウォ」だったという説もある。

ともあれ、その当時文字は漢字だけしかなかったから、その発音に対してかれは「卑弥呼」と表記した。
それが今に伝えられた。

そもそも人名とは言いながら、「卑弥呼」はいまわたしたちが用いている名前とはちょっと違うのではないか?

たとえば彼女の子ども時代、近所のともだちに「ひみこちゃん、あそぼ」と声をかけられたかどうか?
彼女の母親は、「ひみこちゃん、もう宿題すんだの?」とせきたてたかどうか?

どうもちがうような気がする。
ふだんはもっと別の呼びかたがあったのではないか?

百歩譲ってかりに彼女が幼少期から「ひみこちゃん」と呼ばれて育ったとしても、ではその名の由来は何か?

土地の名から取るというよくあるパターンではなさそうだ。
では、地名とは関係なく普通名詞の組み合わせでできているのだろうか?

「ひ」は「日」?
「み」は美称?
「こ」は人一般?

たしかに、この時代は1音節語が多かった。
貴種の生まれであれば、考えられぬこともない組み合わせである。

いずれにせよ、前回の単純な進化論は通用しそうにない。

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