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2010年12月20日 (月)

土地の名 人の名(その3)

時は流れ、あれほど大切にされた土地の名は今ではただの符牒に落ちぶれてしまった。
かわって、人の名が何にもまさるアイデンティティのよりどころとして尊ばれるようになった。

むかしは、土地の名にあやかって人の名をつけた。
今では、逆に人の名を土地にかぶせている。

たとえば、シャルル・ド・ゴール空港なんてのがある。
J・F・ケネディ空港もある。

そもそも「アメリカ」という国名からして、ルネサンスの探検家の名前にちなんだものだ。
そうそう、「フィリピン」も征服者スペインのフェリペ皇太子の名に由来する。
何だか気の毒な気がする。

新しく開かれた名もない(征服者にとっては)土地や新築の施設に人の名をつけるのは、西洋のならいだろうか?

本邦ではあまりその例を見ない。
たとえば、「小泉純一郎空港」なんて想像もできない。

日本で人名を冠した空港と言えば、「高知龍馬空港」しか思い浮かばない。
ほかにあるだろうか?

人の名でも「龍馬」くらいになると、生身の人間というより日本史の中で記号化された存在に昇華している。

日本では、そこまで歴史に洗い流されてようやく空港名として許される。
それでもなお、正式名称ではなく愛称の位置づけなのだ。

フランスでは小学校にも実在の個人の名前をつけているそうだけれど、日本ではどうだろう?
かりにあるとしても、歴史上よほど著名な人物に限られるのではないか?

慶応大学だって、「福沢大学」とは言わない。
早稲田大学だって、「大隈大学」とは言わない。

「龍馬」クラスの人物でさえ大学名としては控えられているのだ。
創立者の名を冠した大学もなくはないが、日本では少数派である。

空港や大学と同じような現象は法律にもある。
アメリカの例しか知らないけれど、たとえば「マスキー法」とか「だれそれ法」とか、法律の通称として中心的にかかわった人物の名前を冠することがある。

ひるがえって、本邦で「鳩山法」とか「谷垣法」とかの例を見ない。

そうそう、先般黄海に展開したアメリカの空母は「ジョージ・ワシントン」という名前だった。
同時に演習に参加した韓国の戦艦も「世宗大王」号だった。

日本では軍艦と言えば「大和」であり「武蔵」であり「榛名」であり「三笠」である。
人の名ではなく、土地の名なのだ。

よきにつけ悪しきにつけ、西洋では個人のキャラが立っているような気がする。
反面、日本では人の名が土地や自然の風物をさしおいて表に出ることは少ない。

土地の名と人の名の関係は逆転したけれども、その度合いは西洋と日本とではかなり異なるようだ。

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