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2010年12月27日 (月)

土地の名 人の名(その4)

むかしは人よりも土地のほうがえらかった。
だから、人々は土地の名前を大切にし人の名前も土地にあやかってつけたりした。

というのが、前々回の書き出しだった。

しかし、もとはといえばその土地の名は人間がつけたのだ。
してみると、やはり土地よりも人のほうがえらいのだろうか?

このブログは前言撤回が多いというのが定評だけれど、最近その頻度が上がってきているように思う。
これも年のせいかもしれない。

たとえばアメリカの首都の名は、初代大統領ワシントンにちなんでアメリカ議会の承認を得て命名されたものだ。

「ワシントン」という語は、もとをたどれば「ワサ族の囲い地」という意味なのだそうだ。
語尾の「トン」は土地をあらわす。

そうやって、古代イギリス人が名付けた地名からあやかってワシントンの一族が発祥した。
その一族がアメリカに渡り、子孫の一人が初代大統領に就任した。
それにちなんで首都の名を「ワシントン」とした、という次第。

どちらがえらいかはさておき、土地と人の間で「名」がキャッチボールのようにやり取りされている。

ところで前回、地名と人名の関係について西洋と日本とではやや趣が異なる、というお話をした。
では、「名」のキャッチボールという点ではどうだろう?

古代人が「ひき」と名付けた土地から比企義員が立ち、「みうら」と名付けた土地から三浦一族が発祥した、というお話を少し前にしましたね。

ここまでは、「ワシントン」の例と同じだ。

しかし新たに建設した都市に、いくら功績があったからと言って「比企市」や「三浦市」という名づけをしたりするだろうか?
あるのかもしれないけれど、ごく少数にちがいない。

「奈良県天理市」、「岡山県金光町」(今は合併して浅口市になった)という自治体の名前がある。
しかし、これは個人名にちなんで命名したわけではない。
こうしたほうが全国的に通りがいい、ということで教団名を市や町の名前にしたのだ。

では、「愛知県豊田市」の場合はどうだろう?
この「豊田」は豊田家のことではなく、たぶん自動車の「トヨタ」を意味しているのだと思う。
自動車の「トヨタ」は今日ではほとんど普通名詞に近づいているから、この名が可能になったのだ。

その証拠に、市のローマ字表記は「TOYOTA」で自動車と同じだ。

しかし、社長の名前はそうではない。
今年、リコール問題についてアメリカ下院(上院?)で証言した社長の前に置かれたネームプレートの表記は「TOYODA」になっていた。
漢字表記を見るかぎりわからないけれど、豊田市は社長の名ではなく車の名にちなんで命名されたのだ。

大学名と同じく、ここでも生々しい人の名を土地にかぶせることは注意深く避けられている。

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