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2010年10月18日 (月)

土地の名前

滑津(なめづ)、太田部(おおたべ)、馬流(まながし)…。

というのは、この夏乗った小海線の駅の名前だった。

太田部(おおたべ)には、むかし大食漢でもいたのだろか?
想像するだけで楽しい。

馬流(まながし)というのは、上代牧の多かった佐久平らしい名前である。

きっとここで、馬の汗を流したのだろう。
むかしの名前は素朴でいい。

もっとも、この解釈はあとから当てた漢字に引きずられているおそれもある。

かし(樫)の木との関連はどうか?
「まなーかし」の可能性はないか?
冷涼なこの地方、樫の木は少ないとは思うが…。

いずれにせよ、地名の考証は郷土史家の方々におまかせしたい。

私が日ごろ利用するJR神戸線は、下り須磨(すま)を過ぎると瀬戸内の海沿いを走るようになる。

須磨から西へ塩屋(しおや)、垂水(たるみ)、舞子(まいこ)、朝霧(あさぎり)、明石(あかし)と続く。

須磨や明石は源氏物語の帖の名前にもなっているから、ごぞんじの方は多いにちがいない。
自分が住んでいるから言うのではないが、風光明媚の地である。

須磨(すま)、塩屋(しおや)、垂水(たるみ)は素朴な名前である。
小海線の駅名と同様の古拙な響きがある。

しかし、舞子(まいこ)、朝霧(あさぎり)あたりになると、ちょっとあやしい。
音声にしろ表記にしろ、どことなくつくりものめいている。

朝霧のあたりは高度成長期以後に宅地開発されたところだ。
駅が設置されたのもそれほど古くない。

駅から一直線に幹線道路が住宅地に向かって伸びている。
道路の右手は「神陵台」、左手は「松が丘」。

いかにもニュータウンらしい地名である。
古代人と現代人の名付け意識のちがいがよくわかる。

日本の地名は、このように素朴派と技巧派に分かれる。

まあ、実用的にはどっちでもいいことである。
地名などひとつの符牒にすぎないと割り切ることも可能だ。

しかし、古拙で素朴な地名のほうが連想やイメージがふくらむことはたしかである。

だから、技巧派の代表格である「東京」の歴史博物館もわざわざあたまに「江戸」をくっつけている。

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