和語と漢語(その4)
特急「あずさ55号」が走るのは大糸線。
愛称はかな表記の和語、路線名は漢字使用、という前回のルールはここでもしっかり守られている。
大糸線は、路線名からわかるように長野県大町市と新潟県糸魚川市を結んでいるのだけれど、「あずさ55号」は新宿始発でこの路線に乗り入れている。
終着駅の「白馬」に降り立つと、後立山連峰の眺めがすばらしい。
ところで、この後立山連峰の主峰である「白馬岳」を、みなさんはどう呼ばれるだろうか?
私は一種のこだわりがあって、若い頃から「しろうまだけ」と呼んでいる。
しかし、「はくばだけ」と呼ぶ人も少なくないと思う。
初夏、田植えの季節にこの山を眺めると、山肌の残雪の形がちょうど「代かき馬」に似ている、ということからこの名がついたと言われているから、もともとは「しろうま」だったのだと思う。
しかしこの名前に「白馬」の漢字を当てたことから、いつしか「はくばだけ」と呼ぶ人が増えてきた。
そして、今では「はくば」のほうが断然ポピュラーになってしまった。
その証拠に、駅の表示板も「白馬」に「はくば」のかな表記を添えている。
よく晴れた日、大阪市中から南東方向を眺めると、奈良との県境にかわいらしいふたつのピークが寄り添うように並んでいるのが見える。
ふたつのピークをまとめて「二上山」という名前がついている。
この「二上山」を、みなさんはどう呼ばれるだろうか?
「にじょうざん」だよ。
ちがうわ、「ふたかみやま」よ。
むかし、この山のてっぺんで私の両親が論争をしたことがあった。
今となっては、なつかしい思い出である。
古歌では、もちろん「ふたかみやま」とうたわれている。
「うつそみの ひとにあるわれや あすよりは ふたかみやまを いろせとわがみむ」
しかし、いまでは「二上山」の文字を見て「にじょうざん」と呼ぶ人のほうが多いかもしれない。
「しろうまだけ」から「はくばだけ」へ。
「ふたかみやま」から「にじょうざん」へ。
「Mステ」における漢語の進出、和語の後退と軌を一にした傾向かもしれない。
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