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2010年8月23日 (月)

和語と漢語(その3)

特急「しおかぜ28号」が走るのは予讃線。
また、特急「いなほ10号」が走るのは羽越本線。

前々回登場した「のぞみ」、「ひかり」、「やまびこ」と同じように、特急の愛称はひらがな表記の和語である。

しかし、その特急が走る路線の名前は漢字表記のままだ。

日本語における和語と漢語のみごとな役割分担と言わねばならない。

特急はわたしたちが乗り込む具体物としての「車両」である。
JRとしてはせいぜい利用してもらわなくてはいけないから、親しみやすい愛称がどうしても必要なのだ。
そこで、かな表記の和語の出番になる。

これに対して、路線名は抽象概念だから別に愛称がなくてもかまわない。
むしろ、表意機能にすぐれた漢字がふさわしい。
前回お話したように、本質をずばりと表現できる漢語のほうがいい。

予讃線は、伊予松山と讃岐高松を結ぶ路線。
羽越本線は、羽後秋田と越後新潟を結ぶ路線。

漢字表記を用いることで、このことが一目瞭然になる。
「よさん線」や「うえつ本線」では、知らない人は何のことかわからない。

日本語の語彙は、幸か不幸か漢語と和語のダブルスタンダードである。
しかも、かなの発明後も漢字を温存したために世界一複雑怪奇な表記システムが出来上がった。

しかし、そのおかげで特急の愛称とその路線名のような楽しい使い分けもできるのだ。

他の言語圏ではどうなのだろう?

外来語はどの言語でもあるものだけれど、日本語における和語と漢語のような際立った機能の違いがあるのだろうか?
それに基づく役割分担や使い分けが行われているのだろうか?

親しみをこめて呼びかける愛称はどの言語にもあるだろうけれど、和語・かなと漢語・漢字の切り換え、というわざは使えまい。

やはり、音声を切り換えることによって対応しているのだろうか?
「ロバート」が「ボブ」に、「エリーザベト」が「シシー」になるように。

それでも、文字種が単一であることからくる単純さは否めない。

日本語表記の複雑さは悩みの種でもあるが、語彙や文字を操る楽しみ(愉しみ?)という点ではこちらのほうに軍配があがりそうだ。

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