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2010年6月13日 (日)

漢字とクラウド

国々の名は、良き意味の漢字2文字をもって表記するように。

という詔が太政官から諸国に向けて発せられたのはいつのことだっただろう?
古い話なのでよくおぼえていない。

ともあれこの命にしたがって、いま私が住んでいる里は「播磨」と書かれるようになった。

そして、播磨の北隣は「但馬」、その東隣いまの行政区画では兵庫県と京都府にまたがる一帯は「丹波」、「丹後」と表記されるようになった。

さて、ここで問題をひとつ。

「但馬」、「丹波」、「丹後」のうち、仲間はずれはどれでしょう…?

すぐに答えを出してしまうけれど、正解は「丹後」。

「丹後」というのは、都から見て「丹波」のさらにむこうという意味の造語である。
漢字の意味を用いているという点で、漢語でもある。

しかし、「但馬」は「たじま」、「丹波」は「たには」という在来の地名に漢字の音を当てた表記なのだ。

もとより「たじま」は和語である。
語源ははっきりしないけれども、一説では「たにま」のなまりであるともいう。

「たにま」と「たには」。

ここまでくれば、その共通性はだれにでもわかる。

そういえば、山あり谷ありの地勢も、気候も、民俗も似ている。
私はむかし但馬に住んだことがあり、お隣の丹波にもよく出かけたのでこのことがわかる。

地元では、これら三地域をまとめて「三たん地域」と呼んでいて、むかしから一体感が強い。

しかし、「但馬」、「丹波」と漢字表記してしまうとその共通性はまったく見えなくなる。

「丹波」も今では「たんば」と呼ばれている。
もとは「たには」に「丹波」を当てたのが、その漢字を音読みすることでもともとの音が忘れ去られてしまったのだ。

良かれあしかれ、漢字はインパクトの強い文字である。
漢字で表記すると、ついその字音や意味に引きずられてしまう。

その漢字は雲のように日本列島を覆っている。
そして、その雲が日本列島や日本語の原像をさえぎっている。

いちど漢字のフィルターをはずしてみること。
表記でいえば、かなで書いてみること。

そうすれば、これまで見えなかった何かが発見できるかもしれない。

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