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2010年5月16日 (日)

地名と漢字表記(その4)

日本とちがって、中国には漢字しかない。
だから、非漢字圏の地名や人名も漢字表記しなければならない。

しかし、漢字の表音機能には限界がある。

たとえば、「マニラ」を「馬尼拉」とするのはまだいいとして、「エジプト」を「埃及」と表記するに至っては、そろそろその限界が見えてきたという気がする。

では、限界を超えたとき漢字はどうするか?

その場合は字音を当てる、という方式をいさぎよく諦めてしまう。
かわりに漢字には表意機能があるから、これを使う。「奥の手」といってもいい。

たとえば、「オックスフォード」は「牛津」になる。
これなどは、漢字表記というよりも漢訳ですよね。

「漢堡」も似たようなもの。
そういえば、有名な「可口可楽」も漢字の表音機能と表意機能をうまく組み合わせている。

わたしたちから見れば、中国では外国地名の漢字表記に四苦八苦しているという印象を受ける。
しかし、当事者たちは漢字の特性を生かして案外これを楽しんでいるのかもしれない。

日本語にはさいわいカタカナがある。
その点ラクなのだけれど、これはこれで別の問題をはらんである。

たとえば、例のハンバーガーチェーンをわたしたちは「マクドナルド」と表記している。

原音をできるだけ忠実に再現しようとするなら「マクナル」のほうがよほど近いのだけれど、誰もそんな書き方はしない。
ローマ字の綴りを忠実にカタカナに移し替えているのである。

ローマ字からカタカナへ、文字から文字への変換。
この場合、音声は完全に無視されている。

だから、日本語における外来語のカタカナ表記は原音との隔たりが大きくなる。
外国人日本語学習者は、この問題でいつも頭を悩ましている。

しかし、考えてみれば音声と文字の隔たりはどの言語でも多かれ少なかれ抱えている。
音素文字であるローマ字だって例外じゃない。

「Shanghai」にしろ「Beijing」にしろ、せいぜい近似値にすぎない。
その証拠に、わたしたちは「Beijing」を「ペキン」と聞きとっているのだ。

しょせん、文字は音声に追いつくことができない宿命にある。

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