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2009年12月27日 (日)

「まな」と「かな」(その6)

漢字は表意文字、ローマ字は表音文字、という分類がよく使われている。

でも、この言いかたが正しくないことはこのブログで何回もお話ししてきた。

たとえば、ローマ字の「g」という文字は単独では何の音も表さない。
「right」という文字列になって、はじめて音を表すことができる。

だから、ローマ字そのものは表音文字ではなく音素文字なのだ。

いや、音素文字というのも片手落ちかもしれない。
なぜなら、ローマ字が文字列となって表すのは音だけにとどまらない。

ちゃんと意味も表している。
つまり、語そのものを表す。

だから、こんな術語はないけれどローマ字は「語素文字」なのだ。

一方、「右」という漢字はそれだけで意味を表すことができる。
したがって、漢字が表意文字であるというのはまちがいではない。

しかし、「右」は意味だけでなく音も表している。
つまり、語そのものを表しているのだから表意文字にとどまらず表語文字なのだ。

したがって、文字と語との関係を対比的に言いたいのなら、「漢字は表語文字でありローマ字は語素文字である」というのがもっとも適切である。

これなら漢字は語の全体を表す文字、ローマ字は語の要素を表す文字、ということですっきり整理できる。

と、ここまではこれまでのおさらい。

では、前回やりだまにあげた「流行る」という文字づかいはどうだろう?

「流行る」における「流行」という文字列は、中国語における漢字と違って何の音も表さない。
たんに、「はやる」という和語への翻訳を指示する機能しかない。

意味だけを表し、何の音も表さない文字…。
文字の定義にもとる文字。

「流行る」における「流」や「行」は、トイレの男女を表すピクトグラムに似ている。

だから、日本語表記における漢字は2種類あると考えていい。
音を表す漢字と音を表さない漢字である。

「インフルエンザ対策を行う」における「対策」は音を表す文字であり、「行」は音を表さない文字である。

音を表す文字はすっきり処理できるけれども、音を表さない文字の扱いは悩ましい。

ここに、送りがなという日本語表記特有の問題が生まれる。

「おこなう」という和語の表記に漢字を持ち込もうとすれば、「行」をどう取り込むのか?

「行う」、「行なう」、「行こなう」…。

なにしろ「行」は何の音にも対応していないのだから、どこまでかなを送ればいいのかわからない。

一応、活用語尾の部分から送るというのが一般的ルールらしいが、ワープロの変換候補を見てもそれで統一されているわけでもない。

「埋立」なのか「埋立て」なのか「埋め立て」なのか…。

本当に悩ましい。

いっそのこと「漢語は漢字で和語はかなで表記する」という決断をすれば、「うめたて」で送りがなの問題は一挙に解決する。

しかし、果たして日本語の書き手がそこまであっさり割り切ることができるだろうか?

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コメント

wangさま

お正月早々、励ましのおことばありがとうございました。
とてもうれしかったです!
読者のみなさんの励ましにこたえて、今年も週1回のペースでアップしていきたいと思っています。
またお立ち寄りくださいね。
それから日本語の勉強がんばってください。

投稿: しおかぜ | 2010年1月 3日 (日) 17時51分

中国の日本語学習者です。あけましておめでとうございます。しおかぜさんのページからほんとうにいろいろ勉強しました。ありがとうございました。文章の掲載を続けてください!

投稿: wanghuaiguo | 2010年1月 2日 (土) 01時09分

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