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2009年11月15日 (日)

漢字と名前(その7)

「ハギノヒメ」は友だちから「おはぎちゃん」という愛称で呼ばれている。

おはぎちゃんは日本列島に漢字が到来した日のことをおぼえている。

漢字は巻物の形でやってきた。
その巻物は大陸の漢字インストラクターが捧げ持ってきた。

到着の翌日から早くも漢字研修会が開かれた。
新しいもの好きのおはぎちゃんもきっと参加したにちがいない。

研修生一同がかたずをのんで見守るなか、インストラクターがもったいぶって巻物を広げていく。

するとそこには、おはぎちゃんがこれまで見たこともない不思議な表象の数々があらわれる。

その時、彼女は一体どんな感想を抱いただろう?
残念ながら、それは今に伝わっていない。

でも、強烈なインパクトがあったことだけは想像がつく。
ことばに形が与えられる、その圧倒的な物神性…。

インストラクターによれば、巻物は先哲のありがたい教えを記したものだという。

文字とはありがたいことばを運ぶもの。
漢字=真名という文字意識が、このときおはぎちゃんの心に刷り込まれたのだ。

今でもそうだけれど、ある程度文字学習が進むと自分の名前をその文字で書いてみる、という課題が与えられる。

漢字には音と意味があります、と先生に教わったおはぎちゃんはあれこれ音と意味を組み合わせたあげく木簡に「萩之比売」とつづってみた。
前半2文字は意味をとり、後半2文字は音を拝借したのですね。

「萩之比売…。何だか私じゃないみたい。」
おはぎちゃんはちょっと照れくさそう。

でも、本当はうれしいのだ。

自分がとても立派になった気がする。
重みがついたような気がする。

真名で自分を表現できる喜び。
それは、10歳の「みゆ」ちゃんが「美優」に生まれ変わったときの喜びに似ている。

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