« 文字の迷宮(その2) | トップページ | 漢字と名前(その2) »

2009年10月 4日 (日)

漢字と名前

毎年、新聞に「今年生まれた赤ちゃんの名前ベストテン」という記事が載る。

たとえば2008年の場合だと、男の子は「大翔」、女の子は「陽菜」がトップだった。
そういえば、少し前の記事にも「大翔」くんや「陽菜」ちゃんが登場した。

しかし、こうして漢字で表記されるとどう読めばいいのか困ってしまう。

「大翔」は「だいしょう」くんだろうか?
「陽菜」は「ようさい」ちゃん? まさか!

さいわい記事には読みも併記されている。

「大翔」は「ひろと、だいと、つばさ」、「陽菜」は「ひな、はるな、ひなた」と複数の読みがあるらしい。

でもこの場合は「読みがある」というよりも「親が無理やりそう読ませる」というのが真相だろう。

前にもお話ししたように、名前はその人の聖域だから他人が容喙することはかなわない。
だから、無理も通るのだ。

名前は、親がわが子に贈る最初の、そして一生もののプレゼントである。
いい加減な気持ちで命名などできない。

すべての親は、ほとんど祈りに近い気持ちで名前をつける。
そして、その名前にはわが子に贈る意味と価値がこめられている。

そこで漢字の出番になる。
「大翔」という漢字表記を一目見れば、親が子に贈ろうとする意味と価値は一目瞭然だ。

ここまでくれば、命名の仕事は一段落である。

あと、名前のことだから読みつまり音声化が必要だけれど、なにしろ日本語話者のことだから漢字本来の字音に縛られなくていい。
適当に、と言っては変だけれど、字音にこだわらず響きのいい音を採用すればいい。

だから、「大翔」という文字表記と「ひろと」という読みがどうしても結びつかない。
逆に、「ひろと」と聞けば「広人」は思い浮かんでも「大翔」にはまずたどりつかない。

ところで最近、このような難読、というか凝った名前が増えてきたと思いませんか?

小沢さんや麻生さんの世代なら、「一郎」や「太郎」といったわかりやすい名前が多かった。
女性でも「美智子」や「恵子」が主流だった。

漢字と読みの乖離が今ほどひどくはなかった。
この名前、一体どう読むの、と悩むことも少なかった。

でも、私のように最近の子供たちの名前に悩むほうが古いのかもしれない。
この際、思い切って発想を変えよう。

この男の子は、

「大翔」という文字の名前。
「ひろと」という音声の名前。

という二つの別の名前を持っているだ、と。

 

|

« 文字の迷宮(その2) | トップページ | 漢字と名前(その2) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 文字の迷宮(その2) | トップページ | 漢字と名前(その2) »