« 文字のワンダーランド | トップページ | 「まじり」の文化(その2) »

2009年7月12日 (日)

「まじり」の文化

西の分析精神が生んだローマ字と東の総合精神が生んだ漢字が数千年の時を経て日本列島で再会を果たした…。

前回はそんな大げさなお話をしてしまった。

でも、日本ではさまざまな系統に属する文字たちが仲良く共存していることだけはたしかである。
このことは、今朝の新聞を開いてもすぐにわかる。

スポーツ面にはこんな見出しが出ている。
「決勝R進出厳しく」、「西野 地元で初V」。

新聞は限られた紙面にいかに多くの情報を詰め込むか、ということに日夜苦心しているから、こんな場面ではローマ字のシンボル的利用が大いに行われる。

でも、ローマ字の活用はそんな実用的な理由からだけじゃない。

学芸欄の片隅に小さなイベント案内を見つけた。
「夏休み親子でわくわくKOUGEIランド」

情報密度を上げるためなら「工芸」と漢字表記にするほうが2文字ですむ。

だから、この表記には実用とは別の意図がはたらいていることがわかる。
どんな意図かは、みなさんがわざとローマ字表記する時のことを考えていただければいい。

ともあれ、この1行の中では、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字という4つの異なる系統の文字が仲むつまじく同居している。
見るからに楽しそうだ。

社会面には、こんな記事があった。
「新ブランド『フォーエバーマーク』のPRディレクター、平良美樹さんは…」

今日の日本語表記の基本的ルールは「漢字かなまじり」である。
だから、このルールに従うなら「ピーアールディレクター」にすべきところだ。

しかし、だれもわざわざそんな表記、しませんよね。
ルール破りをして平気である。
そして、それをとがめる人もいない。

なぜだろう?

もういちど、「漢字かなまじり」というルールをよく見てほしい。

実はこのルールの真髄は「漢字かな」という前段ではなく、「まじり」という後段にあるのだ。

「まじり」とは「混在」ということである。

漢字、かなという文字種のこと以前に、日本語表記ルールの根底には「混在を許す」、「混在を喜ぶ」という基本的な文化がひそんでいる。

だから、わたしたちは自前の文字であるかなを発明したあとも漢字を排除しなかった。
2種類のかなをひとつに統一しようともしなかった。

ということを考えれば、日本語テキストにローマ字を組み込むのは一見ルール破りに見えるけれど、実はもっともルールに忠実なのだ。

ローマ字の新規参入は、「まじり」をさらに豊かにすることなのだから。

|

« 文字のワンダーランド | トップページ | 「まじり」の文化(その2) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 文字のワンダーランド | トップページ | 「まじり」の文化(その2) »