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2009年4月19日 (日)

漢字とローマ字(その2)

地球上にこれまで存在した文字は、話しことばほどではないにせよ、それなりに種類が多い。

しかし、話しことばと違ってその系統をさかのぼればごく少数の起源にたどりつくことができる。

漢字やアステカ文字も含めて、歴史上存在したすべての文字は結局エジプトあるいはメソポタミア地方で誕生した原始文字が四方に拡散して進化したものにすぎない、という学者もいるくらいだ。

ただ、その進化の方向はさまざまだ。

前回お話ししたように、漢字とローマ字もひょっとすると起源は同じなのに、正反対の方向に進化した。

ここが人間の面白いところだ。
同じ人間が作った文字なのに、東と西とではまるで発想が違う。

ローマ字は象形文字から出発し、その後徹底して意味を排除する方向に進化した。
漢字も象形文字から出発し、逆にその意味性をますます充実する方向に進化した。

「魑魅魍魎」や「蠱惑」なんて漢語は、目にするだけでぞくっとする。
ローマ字にはない恐るべきインパクト!

そのかわり、ローマ字は意味を捨てることで汎用性を獲得した。
だから、世界中のすべての言語を書きあらわすことができるようになった。

スワヒリ語、トルコ語、デンマーク語などまるで異なった言語でもたやすく表記することができる。
もちろん日本語も中国語もローマ字で表記することができる。

その汎用性は、言語の表記にとどまらず情報処理技術全般にも広く及んでいる。
もしローマ字がなければ、いまのIT社会は成り立たなかっただろう。

逆に漢字は意味を詰め込むことで身動きがとりにくくなった。

漢字は中国語以外の言語圏にも進出したものの、融通がきかないものだから現地のことばを表記するのにどうしても困難が伴う。
だから、ベトナムではチュノムを生み、朝鮮ではハングルを生み、日本ではかなを生んだ。

漢字から別の文字に移行した例は多いがその逆はまったくない、というのもわかる気がする。

現在、ベトナムはローマ字に移行し、韓国・朝鮮もほとんどハングル一本になった。

これに対して、日本はかなを生んだものの依然として漢字はメインの文字であり続けている。
ローマ字に移行することもなく、漢字を排してかなに一本化することもなかった。
こんな国はほかにない。

太安麻呂が古事記序文の中で「漢字ではおれたちの心情がうまく書きあらわせん!」と嘆いたのは千年以上前の話である。
そして、漢字の欠陥を補うためにかなを発明した(それもご丁寧に2種類も)。

それなのに相変わらず漢字を使い続け、2系統のかなをひとつにまとめることもしなかった。
かくして、世界で最も複雑な表記システムが出来上がった。

ここが日本語の面白いところ、というか不思議なところですね。

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