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2009年2月 2日 (月)

コピー進化論・外伝(その3)

コピー=copyという英語は、外来語として日本語に取り込まれすっかり定着した。
「この資料、10枚コピーしてきて」というフレーズが毎日オフィスで交わされている。

もちろんコピーに対応する日本語がないわけじゃない。
「うつす」というりっぱな動詞がある。

ただ前回「よむ」という動詞についてお話ししたのと同じように、「うつす」も意味範囲が広い。

漢字表記をすれば、「写す」、「映す」、「移す」などがある。

この場合の目的語は、文字テキストに限らない。
人の顔、野山の風景、道端の石ころ、なんでもいい。

それらをそっくりそのまま、手を加えず変形することなく別の次元にあらわす、というのが共通の語義だ。

美しい風景をそっくりそのまま写真に「うつす」。
そして家に帰ってもう一度楽しむ。

自分の顔を水面に「うつす」。
パソコン用語ならコピー&ペースト。いまわたしたちが愛用するコピペですね。
自分の顔をそっくりそのままコピーして水面にペーストするわけ。

じゃまになる巨石をそのままあっちに「うつす」。
こちらはカット&ペースト、つまり切り貼り。これもデジタル文書ではよく行われている。

だから、「この資料、10枚うつしてきて」と先輩(この先輩は外来語排除論者なのだ)に言われた新入社員は一瞬困惑することになる。

この場面では「うつす」の意味の広さがあだになっている。

辞書によれば、copyの本義は「テキストを複写する」、ということだそうだ。
これほど本や書類に密着した語彙もない。

つまりこの場面にはぴったりのことばなのだ。
だから、いくら外来語が気に食わない人でもここはやはり「コピーする」という語を使うほかない。

このように「うつす」という動詞は大きく両手を広げて多様な意味を取り込もうとしている。
逆にいえば、脇が甘い。

コピーという外来語はその脇の甘さを突いて、ちゃっかりオフィスに定着してしまった。

しからば、「よむ」にせよ「うつす」にせよ、どうして日本語の基本語彙はカバーする意味範囲が広いのか、ということが次の問題になる。

しかし、この問題は進化論からはずれるので、いずれまた。

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