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2006年7月 2日 (日)

表音文字と表意文字

たった26個の簡単な文字、幼稚園のこどもでもわかる文字だけで、古今東西、森羅万象を書きあらわせる、というのは、日本語の表記システムとはちがった意味で英語表記のすごいところだ、国際共通語の地位を得たのもむべなるかな、というのが前回のお話でした。

しかし、人間界の出来事でいいことづくめ、というのは少ない。
英語表記に用いるローマ字にも、なきどころはある。

ローマ字は、単独の文字だけでは何もあらわさない(「I」、「a」のようにわずかな例外はあるが)。

複数の文字の組み合わせ、つまりつづりの形になって、はじめて音と意味をあらわすことができる。

しかし、つづりの形になっても、一義的に音を定義することはできない。
英語では、「WRITE」も「RIGHT」も「RITE」も、まったく同じ発音なのはみなさんご案内のとおりだ。

発音だけではわからず、文字によってはじめて弁別できる、というのは、日本語、特に漢語に多い同音異義語と同じような現象である。本には発音の変化の早さに表記がついていけず、そのギャップが大きくなった結果だ、と書いてある。

ともあれ、こういう現象を見ていると、ローマ字は表音文字、というのはずいぶん不正確な表現だ、ということがよくわかる。

ローマ字が表音文字なら、「RIGHT」における「G」は何の音をあらわすんだ?ということになる。
「G」はイマダ音ヲ表サズ、つまり未表音文字である。

じゃあ、どんな表現がいいか?
音素文字というのもまだ不正確だけれど、表音文字よりはましかもしれない。

そこへいくと、日本語の仮名はほぼカンペキな表音文字である。
「つ」という文字は、「つ」という音節をあらわし、他の何もあらわさない。

「つくえ」でも「なつ」でも「あつい」でも、「つ」はつねに「つ」をあらわしている。
つまりひとつの文字が一義的にひとつの音を定義している。

例外は、拗音や促音を表記する小文字くらいである。
助詞として用いる「は」や「へ」もあるが、これは文字の特性というより、かなづかいの問題である。

だから、日本語学習の早い段階で仮名をマスターすれば、あとの発音習得がうんと楽になる。

漢字は表意文字、というのも、ローマ字は表音文字、というのと同じくらい不正確な表現である。

漢字はたしかに単独で特定の意味をあらわしているが、同時に特定の音もあらわしている。
意味と音のセット、つまり語をあらわしているから、ただしくは表語文字である。
だから最近は、表意文字というよりも表語文字という表現を使うほうが一般的になってきている。

漢字が表意文字でないとすると、本来の表意文字、つまり意味だけをあらわし音をあらわさない文字はないのか?

実は、それがあるんですね。
日本語における訓読みの漢字が、それである。

たとえば「卒業式を行う」という文における「行」の文字は何をあらわしているか。
この場合は、「行」という漢字が持つ意味をあらわしてはいるが、同時にこの漢字が持つ特定の音は一切あらわしていない。

わたしたちはこの文を「そつぎょうしきをおこなう」と読んでいるけれども、「行」という文字が単独で「おこ」または「おこな」という音をあらわしているわけではない。

適当に送り仮名をくっつけて、「行」の部分を「おこ」または「おこな」にあてはめる、という仮定を設けているにすぎない。

まことに世界にはめずらしい不思議な表意文字である。

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コメント

表意文字が意味する本当の意味が分かりました。勉強になりました。

投稿: | 2013年9月 9日 (月) 10時40分

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